え~、おかんボーカルのバックでドラム、叩いてきました。
マイマザーはジャズボーカル教室に通っていまして。
なんでも神戸で発表会をやることになり、演奏曲目がQueenだと。
「今回はロックな感じでいくってなったからあんた、出ない?」
みたいな。
Queenといったらアレですよ。ロックをやってるものならみんな通る道ですよ。(フレディのピチピチタイツとか着たり)
正直ジャズの発表会に出て行くなんて無理!なんですが、
「自分の肉親と一緒にステージに立つ」
ことの出来る人間がどれだけいるか?ということと、これも親孝行かな?と思ってでることに。
そして当日、リハーサル。
僕はドラムセッティングが普通の人と逆なので、
最初にリハーサルをすることに。
ピアノの先生に
「今日はよろしくお願いします。じゃあ譜面を渡しておきますね。
え~最初はドラムにカウントをもらって、140(スピード)くらい、
アウトロは~、感想は~~」
と打ち合わせしてもらう。
こっちもお世話になる身、一生懸命
「あ、そうですね、母からデモをもらって聞いてるので曲の展開は大体~」
と話を合わすが、
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僕、譜面読めません。
小学校の時に頂いた音楽の成績は「2」です。
ちなみに小学生の音楽会のときに
一度ドラムを志望した事があるのですが、
ドラマーの選考会に参加したはずが、どこをどう間違ったのか
気が付いたらカスタネットの選考会に参加していたのは内緒。
(しかも落とされた。)
話がそれましたが。
セッティングを終えた僕以外にステージにいるのは
ピアノ、ウッドベース、サックス、おかん、俺。
え!?なにそれ?
サックスの人がいるなんて聞いてないよ!?
しかしここでイモ引くわけにはいかない。
俺のロック魂を見せてやるぜ!
ワン、トゥー、スリー、フォー! ジャーン!
ピアノの先生「ドラム大きくてベースが聞こえませんね。」
なんだとう。
え~結論から言いますと、超浮きすぎ。
だってジャズの発表会ですもの。
完全にコピーしていったはずのQUEEN(原曲はロック)が超場違い。
ベースの人「ああ、ベース上げます。(苦笑)」
くぅぅぅぅぅ、今すぐ死にてぇ!
さすがにねぇ、
ロックドラマーがいきなりジャズカルテットに入ろうとしても
無理ありすぎ。
顔から血が出るような(火ではなく)ハズカシさをこらえて
なんとかドラムの音量を下げようと四苦八苦。
そしてこの日は2曲演奏することになっていたのですが、
ピアノの先生「・・・じゃあ2曲目いきましょう。これはサンバで。」
サンバ!?
え?わけわからん、これ、ジャズの発表会ですよね?
もう開き直って適当に叩く。
普通の譜面すら読めない僕にジャズの譜面なんぞ読めるわけもなく、先生方の進行に合わせてうん、うん、とうなずくフリをする。
そしてリハーサルが終わってしばらく放心。
まさか出演者と自分の間にこんなにも温度差があったとは。
あまりのショックに立ち尽くすも、徐々に悔しさが沸いてきて
「こうなったら精進あるのみだ!」
幸い、発表会の会場の近所にいつもバンドでお世話になっているスタジオがあったので電話でスタジオ予約を取る。
そして1時間強、何とかバンドのボリュームのバランスが取れるように様々な苦心を重ね、曲のアレンジも考える。
ドラムスティックを通常のものからロッドと呼ばれる竹ひごのような軽くてボリュームの出ないものにしたり、
一番問題のバスドラム、 (一番低いドン!という音です)普段のヒールアップ&クローズ奏法のボリュームコントロールではとてもじゃないけど曲を台無しにしてしまう。しかしヒールダウン奏法(ボリュームを小さく、細かいニュアンスが出せる奏法)などやったことがない。
技で駄目なら創意工夫だ!とばかりに足で演奏するビーター(まぁ足のスティックです)を限界まで短くし、普段どおりにガンガン踏んでも音があまりでないようにする。
さらに本番、自分が盛り上がりすぎても大丈夫なようにシンバルの角度もチップが当たりやすいよう鋭角に。
うっわ、めっちゃ付け焼刃。正直言って演奏しづらいが、背に腹は変えられない。
そして本番。
よりによってうちのオカンはステージ前の特等席に自分の友人たちを招待。
さらに自分の妹(つまり僕の叔母)たちまで呼んでいた。
自分の出番が来るまでひたすら自分に言い聞かせる。
「止まない雨は無い、明けない夜は無い、終わらない発表会はない!」
普段僕は自分のバンドでライブをするとき、あまり緊張することは無い。
何故か大きなステージであればあるほどその状況が笑えてきて楽しく演奏できる。
しかし、この日は尋常じゃなく緊張していた。
自分が足を引っ張る状況と言うのはかくも辛いものか・・・。
そしてわが母親の出番。
僕はひっそりとドラムをセッティングしてそそくさと演奏し、
さっさと退散しようと思っていたのだが、
セッティングに時間がかかるのを心配してくださったジャズボーカルの先生がご丁寧にmcをしてくださった。
「次はやっちん母親さんなんですけれども、今日は特別に!ドラムをやっている息子さんが!応援に駆けつけてくれました!!!」
沸きあがる拍手。
穴を探してバスドラムの穴に逃げ込もうとする僕にさらなる追い討ちが。
「息子さんは普段は何をしてらっしゃるのですか?」
キター!それだけはやめて欲しいと心から願っていた質問!
僕はこの発表会に出る時に母親に一つだけ条件を出した。
「自分がナチュラルパンチドランカーというバンドで活動していて音源を出してライブをやって、様々なメディアにお世話になっていることは絶対内緒な。」
ロックドラムには多少の自信がある。
しかしジャズドラムとなれば全く話は別であり、もしドラムを仕事にしているというのを知ったらみながそういう目で見るだろう。
それだけは避けたかった。
しかし僕がそういったために返答に詰まる母。
やべ!なんとか学生とか(無理がある)会社員とか、適当な嘘でごまかしてくれ!
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母「ぼーっとしてます。」
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└-○--○-┘=3
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その瞬間、ドラムに座っていた彼は
MAXボリュームの4カウントを鳴らし、
地獄の轟音であるかのようなドラミングであたりを血の海に染めた
わけでもなく、きちんと演奏しましたよ。
ジャズっぽく。
あくまでもぽく。
たった2曲のライブなのに、
間奏を忘れて勝手にソロにいったり、ミスはありましたが、
ライブが終わったあと、自分の母親が
「気持ちよく歌えた。」
と言っていたので、それでよしとしよう。
彼は、泣かなかったと、言います。