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タイ、香港旅行記 〜序章、散骨〜

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「ワシが死んだら、どこか温かい南の海、カリブ海にでも散骨してくれ」

晩年の祖父の口癖だった。

この口癖は冗談めかしながらもたまに口走り、場所は
「カリブ海」「ヒマラヤ」「黄河」
など様々だったが、回数はカリブ海が一番多かった気がする。
晩年体が冷えて、夏でも厚着だった祖父だけに、その印象も強かったのかもしれない。

元々海外旅行がとても好きで、自分で起こした会社を早期リタイヤしてからは、祖母とともに百カ国以上の国に旅行していた。
正月や何かのタイミングで祖父の家を訪れる旅に
「〜〜に行って来た。凄く奇麗な街だった」
「〜〜って国は暑くてな、悪いヤツばっかりだ」
など、リアルな体験談を聞かせてくれた。

その祖父が、先日亡くなった。

晩年は癌により腹水がたまって入退院を繰り返していたが、本人が痛みを感じる事は少なかったらしく、苦しむ事も少ないとても静かな最後だった。
あまり周りに迷惑をかける事も無かった。

葬儀も無宗教で坊主嫌いを公言し(うちの母方は寺なのに!)

「死んだら”音楽葬”にしてくれ。お前(僕)はワシが出棺する時に聖者の行進でも叩いてくれ。」

などとふざけていた。
もちろん太鼓一つで聖者の行進など演奏出来るわけも無いのでそれは叶わなかったが、言葉通り四重奏を雇ってクラシック音楽が流れる中で葬儀を行う「音楽葬」を行い、故人を弔った。

祖父は大変公平な人格者で、葬儀には沢山の人がやって来て、泣いてくれていた。
僕はといえば、お通夜で祖父のロウソクを替えながら、久しぶりに集まった兄弟三人と祖父との最後の夜を過ごしたり、何故か葬儀中の写真を撮ったり、直前にやっちん家代表(長男だから)挨拶などを任されて悪戦苦闘していた。普段はろくすっぽスーツも着ないのに。

葬式も終わり、近親者で骨を焼き、小さくなった祖父と対面。骨壷に納め、帰る直前。

忙しさの中で忘れていた、
「ワシが死んだらカリブ海にでも散骨してくれ」
この言葉を急に思い出して、慌てて引き返す。
胸ポケットにしまっていた奇麗なハンカチに祖父を少し分けてもらい、家に帰る。

勢いで「散骨するから骨を分けてくれ」などと言ったものの、勿論今まで散骨などした事は無く、また周りにはそんな経験を持つものはいなかったので、法的な問題や方法などを調べるべく、僕はパソコンを開いた。