暦の上ではまだ初夏というには早いだろうか?
しかしこの雲すら遮ってくれない強烈な日差しの所為で自分の陰が消されそうなのに耐えかねて、どこか一人でも時間を潰せそうな店を探す。
しばし周囲を見回した後、自分の故郷でも見慣れた看板の店を見つけ、これ幸いと逃げ込むように入り口の自動ドアの前に立つ。
清潔な店内、昼前の喧騒に気持ち顔をしかめながらカウンターへ。
一見すると思慮深そうな、それでいて根暗にみられない程度の爽やかさを心がけながらメニューの品を選ぶ。
朝と呼ぶには少し遅いが、起きてからまだ一時間。
脳を起こすには当分が必要だ。
あくまでも私が「それ」と悟られないように数珠状の小麦粉に糖を塗った食べ物と、それよりはあっさりしているであろう同素材のものを頼む。
勿論同時に飲み物を頼んで
「安価な商品のみで長時間居座る」
と思われないように店員を牽制するのも忘れない。
まぁ私が渋いコーヒーでも飲めたらもう少し格好もつくのだろうが、あいにく胃腸はそれを好む様には出来ていない。
自分のダンディズムの足り無さを心の中で詫びる。
一通り注文を終えると、銀や銅、アルミなど色とりどりの金属を掌(たなどころ)でもて遊びながら、店員が商品を用意するのを待つ。
自分の目の前に整然と陳列された商品を見ながら、
「左から二番目の一番バランス良く砂糖がかかったヤツを選べ!」
と店員が持つハサミに念を凝らすも、あいにくその一つ隣に着地。
「その一つ隣にして下さい」
と言うのも大人げないので動揺を気取られないよう細心の注意を払って代金をトレーに乗せる。
私がこの店に入るまで時間をうろつき時間を潰していたこの街は、お世辞にも素敵とは言えない風俗街だ。
煙草をくゆらせながら喧嘩とも討論とも取れる会話を交しているアジア系の外国人の横を通り、比較的静かな禁煙席を探す。
紫煙が届いてこない最良の場所を確保し、おもむろに目の前の美味をむさぼる。
「あーポンデリングうまぁー!フレンチクルーラーも外せないよねぇー…」
…いかに渋く表現しようとしても、男が一人、ミスドでドーナツを食べるというシチュエーションには限界がありますね。
こんにちわ、名古屋のミスドからやっちんでした。
(ダイエット失敗)