三日目。
朝起きて朝食。
この日は風邪が強く、海も波が高かった。
昨日のうちに祖父を弔って良かったと、安堵する。
象に乗りに行く。
動物園ではいつも遠くでしか見る事が出来ない象さんを間近で見られるチャンスは滅多に無い!と意気込むも、以前
「タイの町中で麻薬漬けにした象を見せ物にする悪質な商売」
があるのを知った事や、結局観光用に飼育されるという事がどういう事か、また、開墾されたために餌を失った野生の象が、農家を襲って人が死ぬ事などをニュースで見たりした事で、複雑な思いを抱えたまま、象乗り場に向かう。
コースは1時間ほどかけて象がジャングルを歩くもの。
象乗りが運転する象にまたがりながらのんびり散歩するも、やはり象が進みたがらない時は飼い主が棍棒で叩くし(叩かれたところは皮が剥けている・・・)、その象乗り(勿論客には親切)が笑いながら日本語で
「ゾウサンーガンバレー」
と言っているのを見ると、なんとなく、本当に何となく、確たる理由を考えられないまま、少し憂うつになる。
象乗りが持っている棍棒は先に金属の尖ったフックが付いており、もしかしてこれで象を殴るのか?と不安になったが、どうやらこの棒はゴムの木を削るものらしい。
タイにはゴムの木が沢山栽培されており、そのフックで斜めに引っ掻くとゴムの木の樹液が出てくる。
象乗りはそこらに生えているゴムの木を引っ掻いて実演してくれた。
乳白色の樹液は瞬く間に乾いてゴムになった。
「タイヤの原料のほとんどは、ココで作られて日本でも使われているんだ」
こういわれたとき、僕は
「タイヤって石油じゃなかったっけ?」
と思いましたが、後で調べてみると、環境に優しい天然ゴムで出来たタイヤが今ブームらしいです。
現在の日本の学習机も、ゴム材で出来たものが多いそうだ。
植えられて2〜30年ほどゴムを生産し、伐採されて机になる。
素晴らしい木材だ。
(ソース)
しばらく歩いた後、突然象乗りが振り返り、英語で
「内緒だよ!」
と良いながら象から降りて、僕に象の運転席に移れという。
象さんの頭越しに見るジャングルはとても良く、象さんの頭に生えている毛はとても固く、暑いとはためかせる耳にバシバシ当たりながら、歩かせてもらう。
勿論、内緒で客に運転席を明け渡し、気を良くした客がその後チップを弾むというこの一連の動作は予定調和なのだろうが、それでも感動した。
象発着場に戻ったあと、乗せてくれた象さんにお礼にバナナをあげて(50バーツ)触らせてもらう。
思っていた以上に蛇腹で固い鼻、器用にバナナをつかむ鼻先を堪能する。
頭を切り替えて、象さんの大きさと優しさ、可愛らしさと賢さを堪能する事に集中する。
やっぱり凄い生き物だ。
象さんから降りた後、隣で器用にハーモニカを吹きながら前後に踊る子象を、余計な事を考えないように見ながら、象乗り場を後にした。