Moral Hazard!!

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富士山登頂記

No Comment 旅行記,過去ログ

2008年7月14日 大分県臼杵港を出発する。
13日に大分県でのライブを終えた後、打ち上げに参加してその足で夜中の温泉街を疾走し、船に乗り込みながら明日の富士山登山計画を反芻する。

「30才までに富士山登りたいなぁ~。」

某ライブハウススタッフや某ミュージシャンと鍋をつついていた時に誰かが発した言葉だ。
僕はどう頑張ってみても時すでに30歳なのだが、霊峰富士には確かに興味がある。
生きているうちに日本一高い山には登るべきだという変な義務感にも駆られて、富士登山計画は始まった。

始まったといっても、実際には「7月15日16日に登る」という事しか決めてなくて、僕は前々日に大分県でライブ、他にも直前に沖縄行ってるヤツや前日に北海道で仕事してるヤツなんかもいた。

「俺もうめんどくさいから普段着普段靴でええわ!だって元ボーイスカウトだし!」

余裕綽々(しゃくしゃく)の僕は何を隠そう、20年も前に氷ノ山(1500m程度の兵庫県の山)に登ったことがあるだけで、ボーイスカウトではもやい結びの一つも出来ない駄目っぷりだった。

6月7月と、ライブ会場でバンドマンなどに「富士山登るねん~。」などと吹いていたら、段々方々から電話がかかってくるようになる。

「富士山なめんな!」

「5人中2人が高山病でギブアップした」

「悪天候で死ぬ思いだった!」

ちょっとだけ不安になる。
インターネットで富士関係のHPを見ると、富士山には沢山の登山口があることを知る。
頂上は氷点下まで冷え込むことを知る。
高山病にかかってリタイヤする人がいることを知る。
つまり自分が何も知らなかったことを知る。
7月上旬、カレーパーティを兼ねて富士山ミーティングを行うも、登山メンバーである某今村が作ったひき肉のカレーが美味しくて、カレーは煮られど富士山の話は一行に煮詰まらず。

あれ、これ、ちょっとヤバイ。とかなり不安に駆られる。
水漏れするアディダスのスタンスミスで登るつもりだったけど、無理そう。
「トレッキングシューズだけは絶対買っておけ!」
と某バンドマンに薦められて、大分県の打ち上げでで神戸の若手バンドLonely↑Dがはしゃいでいる間も気が気じゃなくなる。でもドラムの某が持っている滑らない話はやっぱりすべり知らずだった。

そして13日、大分でライブ直後に夜走りで神戸に帰りバンドメンバーと解散した後、慌てて登山メンバーとトレッキングシューズを買いに行く。

14日 12:00

店員「富士山ですか…いつ頃のぼられますか?」

僕ら「明日です。」

なんか店員にちょっと説教された。
もっと前に買ってはいて慣らすのが常識だとか、いきなり履いたら靴ずれ絶対起きるとか。
くそ、なんで店の中でロッククライマーみたいな格好してるやつに説教されないといけないんだ!と憤りつつ、直前の大分とんぼ返りツアーで24時間以上履きっぱなしドラム踏みまくりアクセル踏みっぱなしの熟成靴下で試着してやる。

14日 14:00

帰宅。前もった準備がまるで出来ない僕、慌てて登山の準備を始める。
登山口の選択、山小屋仮眠の予約、どれもギリギリで間に合う。
タイムスケジュールと費用を考える。
朝7時に三宮集合して~富士山富士宮口新五合目に到着を6時間と考えて~…ガス代が…
旅は予定を立てているときが一番楽しい。
そうして完成したタイムスケジュールを、登山メンバーにメールで送信する。
「富士山通信」
などとタイトルを付けて送っている辺り、まだ余裕を感じる。
その後youtubeで丸大ハンバーグの昔のCMなどを見て笑っていたら、どんどん時間が無くなっていった。

14日 23:00

準備がまったくはかどっていない。
親父が、探検隊みたいなヘッドランプを持って帰ってきてくれた。
カバンにアイテムを詰めだす。
お菓子1キロ超はやりすぎたと今でも反省している。
午前1時半、就寝。

15日 05:00

起床。連日の睡眠時間が平均4時間を割っている事にびびる。
睡眠不足はHP三割減だそうだ。
富士山では風呂に入れない(高度が高いところでは水など貴重品、山小屋のバイトは10日風呂に入らないのは普通らしい)ので、念入りにシャワーを浴びて、美しさを増す。

15日 07:00

三宮集合のはずが、予定時刻を過ぎても誰も現れない。
まさか最年長者である自分がそういうイジメに会うはずないよね…?と不安になりだした頃に、メンバーと車が到着。無事出発。

15日 07:00~14:00

車ではしゃぐ。
何故これから始まる登山に向けて体力を温存できないのか、今考えても自分を殴ってやりたい。

15日 14:30

富士山の南側に在る登山口、富士宮口新五合に到着。
富士山はふもとから1合、2合~頂上の10合まであり、五合目までは車で登る事が出来る。
富士宮新五合は2400m。
富士の頂上が3776mだから、楽勝じゃん!と思っていた時期が、僕にもありました。

15日 15:00

検証用に持ってきたスナック菓子の袋がパンパンに膨れているのに感動しながら、登山開始。

同じ時間に登山を開始したおじさんグループに、お、同じ宿だね!一緒に頑張ろう的な言葉をもらって、入山。

15日 15:00~18:00

(というか雲)でかなり視界が悪いが、順調に登山。
ずっとふざけ続けている姿を他メンバーに写メ撮られてて、後で見て恥ずかしくなる。
肝心の自分の写メは、

高山植物ばっかりで、何しに来たのか分からない。

この段階ではみんな結構元気。
結構なスローペースで登っていたためか、予定時刻より遅れ気味。
7合目辺りで先ほどのおじさんグループの一人に

「若いのにだらしないぞ!ほれほれ!」

とからかわれる。

15日 18:00~19:30

暗くなりだした頃、雲の上に出る。

雲海の上に浮かぶ月を見て、テンションが上がる。

8合目の山小屋で、先ほどのおじさんグループが何か相談している。
おじさんグループは6人ほどだったのだが、どうやら半数が高山病にかかったらしい。
先ほど檄を飛ばしていたおじさんも顔面蒼白になりながら、8合目の宿に消えていった。

みんなが疲れてテンションが下がりきった頃に、富士は新しい顔を見せてくれる。
太陽が沈む頃、雪渓が見えた。
9合目に待つ山小屋まで、もう少し。
ずっとふざけ続けているのを、メンバーに咎められる。
ふん、お前らとは基礎体力が違うんだよ!

15日 20:00

9合目にある「万年雪山荘」に到着。
実は登山ペースが結構遅く、到着予定時刻より大幅に遅れてのチェックインだったが、晩御飯を作ってくれた。(山小屋はご来光を見るために夜中に出発する人が多いので、午後8時には消灯。)
インターネットなどでよく「山小屋は接客悪い」とか書いているのを見るが、多分全ての資源が貴重な山の上で無駄を極力省いている結果が、そっけなく見えるだけなんだと思う。
富士山はお湯を沸かす温度「沸点」が低いので、料理も普通に出来ない。
水も貴重品なので、トイレもバイオトイレ(環境庁が2億円かけて作った!)などが使用されており、有料(200円程度)。お風呂なんてもってのほか。とあるHPでは、風呂に入れない山小屋スタッフが大雨で頭を洗っていたと書いてあった。
確かに貴重なのは分かるが、7合目でポカリスウェットが500ml500円で、地上ではそれより高価な某ゼリーが300円なのは、何かおかしい気がした。

15日 21:00

自分の身長より狭い寝室にて、就寝。